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執筆者の写真Natio Miyakawa

絶対に妥協して購入してはならないもの

更新日:2022年10月5日


絶対に妥協して購入してない方がいいと思うもの。

それはコップだ。


毎日使うものだから、誕生日だの、〇〇祝いだの、と貰ってしまうコップ。

展覧会に行って、旅行に行って、記念だからと買ってしまうコップ。


我が家では、日常使いのコップにbodumを使っていた時期があった。


▲ bodumのダブルウォールグラス。洗練されたデザインと機能性を併せ持つ名品です。


bodumの代表作と言ってもいいダブルウォールグラスはおしゃれだ。

機能面も申し分なく、材質的に耐熱性にも優れていて、手のひらからの熱も遮断される構造のため、冷たいものもそのまま保ってくれる。


BRUTUSに掲載されてそうなオサレ雑貨店に陳列されているそれに一目惚れして、値段もそこそこだし、しばらく使っていた。

100mLなんてサイズを誰が使うんだと思っていたけれど、『将棋界の羽生善治9段(2022年10月2日現在)が対局中にどんなに大きなコップを使用していても、自分が飲む分だけをペットボトルから注ぎ、飲み干す』と言う丁寧さに憧れていた私は、躊躇することなく、ものすごく小ぶりなスタイリッシュすぎるコップを購入した。



▲ 対局の際に棋士の右手には、大抵飲み物が置いてあります。ニコニコ動画でチェックしてみて下さい。



帰宅したパートナーは「君はエスプレッソでも飲むのか?それ専用にコップを6つも買ったのか?」と、私に似合わないコップを見て本気で心配していたが、私はそれを大いに気に入って、羽生さんと同じく「自分が飲む分だけ飲み物を注ぐ」丁寧っぽい暮らしを手に入れた。


 


ところが、我が家ではこのbodum、とにかく割れる。

娘がコップを倒し、落とし、時には噛んで割った。

コップの耐久性の問題ではなく、こちとら使い道の問題だ。もちろん危険なので、速攻でbodumは「大人のコップ」になった。



しかし、それでも割れる。

私の皿洗いが雑なせいだ。

私は考え事が多い上に、娘の熱烈な「お母さんコール」に日々さらされているため、皿洗いの時に『つるん、がちゃん!』を繰り返している。


bodumの6個は半年ほどで消えた。



気に入ったコップというのは難しい。

完璧に気に入ったものとなれば、そうそう見つからないが、毎日水は飲む。

そして、妥協して購入したbodumの250mLのコップ。



▲ さまざまな大きさがあります。


多少の口周りも厚く作っているように見えるし(大嘘)、コップに対する行動回数が少なくなるというのは割れる確率も少ないという事だ!という訳がわからない理論を展開して、bodumはやめろというパートナーを押し切った。パートナーに口酸っぱく「まずは一個だけ!それからだ!」と言い含められて、1つだけ購入することにした。


 


ところが、この決断が最大の誤りだった。

確かに気に入っていた100mLのbodumが多少大きくなっただけのデザインなのだが、熱いものを入れるには大きく、「熱エネルギーの塊」になったそれを碌すっぽ持つことも出来ない。冷たいものを入れるには小さく、氷を入れるとスタバのフラペチーノの最後のラスト一口、みたいになってしまう。私にとっては「帯に短し、襷に流し」コップになってしまうのだ。

そして、最大の誤算がそのフォルムで、「多少大きくなった」ことが、私にとっては「どんな色の液体を入れても食卓に馴染み、可愛らしさと上品さが完璧に収まりきるデザイン」ではなくなってしまっていたのだ。

同じbodumでも「なんか違う」

食卓に並べた時のバランスも「なんか違う」

家にある椀や丼とのバランスも「なんか違う」

茶碗蒸し「違う!」

ミニパフェ「これはなんかアリ!」


シンプルで大きいものはデザインが難しい。

I-phoneの四隅が角ばっていたら、一定数のユーザーは離れるだろう。

そのことを念頭に置いておかなかった自分が悪い。

しかし、私は食卓を準備するたびに、少しだけ水を飲むたびに、この言いようのない絶妙に気に入っていない感じを思い知らされている。



そして、残念なことにbodumの250mLは我が家では割れない。



適当に買った食器ほど割れないものはない。セレクトショップで買った一枚8000円の皿はどんなに大切に扱っていても割れるのに、100均で「まあ、後で買い直せばいっか」と買った白い皿は全く割れない。

…私は馬鹿なのだろう。




そんなこんなで、かれこれ3年くらいの付き合いがある。

好きになろうと思ったこともあった。

「いつもありがとう」と思ったこともあった。

だけど、絶妙に好きになれない。

「あなたが役割を終えるのはいつなのでしょうか。働きすぎだと思います」という念を捨てきれない。


こんな不憫なコップは世の中にはないのではなかろうか。

だから、コップは妥協して絶対に買ってはいけない。







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